LIVEreview
by YOSHIYUKI"HIT ME!"HITOMI
デュラン・デュラン&
CHIC feat.ナイル・ロジャース 日本武道館 in 東京
2017/9/20
☆SET LISTS☆
【Bloom Twins】
TABOO
DO YOU DARE [new,co-written with Nick Rhodes]
SHE'S NOT ME
GOTTA MOVE ON [new,co-written with Nick Rhodes]
SET US FREE [download single 2016]
【CHIC featuring NILE RODGERS】
EVERYBODY DANCE [Chic]
DANCE, DANCE, DANCE (YOWSAH, YOWSAH, YOWSAH) [Chic]
I WANT YOUR LOVE 愛してほしい [C'est Chic]
medley:
I'M COMING OUT [Diana Ross /Diana]
UPSIDE DOWN [Diana Ross /Diana]
HE'S THE GREATEST DANCER [Sister Sledge /We Are Family]
WE ARE FAMILY [Sister Sledge /We Are Family]
LIKE A VIRGIN [Madonna /Like a Virgin]
GET LUCKY [Daft Punk /Random Access Memories]
LET'S DANCE [David Bowie /Let's Dance]
LE FREAK おしゃれフリーク [C'est Chic]
GOOD TIMES [Risque]
includes Rapper's Delight[Sugarhill Gang /Sugarhill Gang]
【Duran Duran】
PAPER GODS [Paper Gods]
THE WILD BOYS [Arena]
I DON'T WANT YOUR LOVE [Big Thing]
A VIEW TO A KILL 美しき獲物たち [single]
COME UNDONE [Duran Duran (93)]
LAST NIGHT IN THE CITY [Paper Gods]
ONLY IN DREAMS [Paper Gods]
LOVE VOODOO [Duran Duran (93)]
NOTORIOUS [featuring Nile Rodgers] [Notorious]
PRESSURE OFF [featuring Nile Rodgers] [Paper Gods]
HOLD BACK THE RAIN [Rio]
FACE FOR TODAY [Paper Gods]
ORDINARY WORLD [Duran Duran (93)]
(REACH UP FOR THE) SUNRISE [Astronaut]
includes NEW MOON ON MONDAY [Rio]
HUNGRY LIKE THE WOLF 狼のように飢えて [Rio]
WHITE LINES [Thank You]
GIRLS ON FILM グラビアの美少女 [Duran Duran (81)]
<encore>
THE UNIVERSE ALONE [Paper Gods]
/SAVE A PRAYER [Rio]
RIO [Rio]
2015年の十二月以来、一年九ヶ月振りとなった今回のシック来日公演は、デュラン・デュラン(以下DDと略記)が2015年から二年弱という長期にわたって行った「ペイパー・ゴッズ・オン・ツアー」最終地である日本公演(東京公演のみ)のスペシャル・ゲストとしてという変則的な形で行われた。来日公演の発表が直前まで無かったので、海を渡ったデュラニーズ(熱狂的DDファンの通称)も多かったのではないだろうか。シックは昨年のDD北米ツアーに帯同し、好評を博している。一日だけとは言え、その組み合わせが最後の最後に日本で実現したのは嬉しかった。
因みにシックの単独ではない来日公演は、2003年夏の「マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァル」(マーカス・ミラー、アヴェレイジ・ホワイト・バンド他と)、2004年の「Let's Groove 2004」(ジェイムズJTテイラー、シャラマーと)以来となる。思えば我々が「初来日公演」としている「JT Super Producers 96 Nile Rodgers」も字面通り名義はナイル・ロジャーズで、シックはそのハウス・バンドとしてゲストを迎えるという形であった。それがロジャーズ永遠の相棒=バナード・エドワーズと舞台を共にした最初で最後の来日公演となり、最終日(CD/DVD化されている)の翌晩、都内のホテルで客死するというまさかの結末を迎えている。あれから二十一年。
シックが1996年の四月から二十一年と五ヶ月振りに日本武道館に戻ってきた。あの晩の想い出を共有しているのはロジャーズ、リチャード・ヒルトン(左手key)、そしてゲストの一人だったDDのシンガー=サイモン・ル・ボン。あの時はル・ボン登場で客席がかなり沸いたので、デュラニーズもかなり居たのだろう。舞台上の三人だけでなく、あの時も今回も武道館へ足を運んだという、僕も含めて決して少なくないと思われる観客の心中にも、それぞれ去来するものがあったと思う。僕はエドワーズの存在を感じた。・・・まぁ、後任ベーシストのジェリー・バーンズは大柄だから、その陰に隠れて弾いていたかもしれないね。
今回の出演者は三組。直前に参加が発表されたブルーム・ツインズ、シックそしてDDの順で出演。シックの持ち時間は一時間強だった。なおロジャーズはDDのセットにも二曲で出演している。
本稿はシックのウェブサイト用のものなのでシックにフォーカスをあてて執筆した事を御了承頂いて、それではライヴ・リポートを。
尚、この日のライヴは前回(2015年)のシックと同じくWOWOWによって撮影されていた。十二月に放送予定。せめて一曲だけでも、シックの演奏も放送される事を期待して。
【BLOOM TWINS】
ブルーム・ツインズは、ソーニャ・クプリエンコ(vo,key、向かって左手)とアナ・クプリエンコ(key,vo、同右手)というウクライナの双子姉妹(ライヴはドラマー=ポール・ラヴを加えた三人編成)活動拠点はロンドンで、2013年に配信シングルでデビューしている。近く発売予定というデビュー・アルバムにDDのニック・ローズ(key)がプロデューサー及び共作者として関わっている縁でDDのUKツアーに帯同、その流れから来日公演にも参加となった模様。因みに今年の二月にも来日公演を行っている。
音楽性は自らダーク・ポップとカテゴライズする、いかにもローズが気に入りそうな、DDの世界でいえばアーケイディア寄りのもの。と思ったら五曲中二曲はローズが共作している新曲だった。納得。歌声はケイト・ブッシュやアニー・レノックス、ビヨークを思わせる力強さを感じさせた。双子ということもあってかユニゾンもハーモニーも綺麗に響き合う。
二人はファッション・モデルもしている事もあり立ち姿が堂々としていて、一万人の、しかも殆んどが自分達目当てではない(それどころか知らない)観客を前にしても物怖じしていなかった。事実上「客入り時の前座」扱いだったのだが(場内照明が明るいままだったのは可哀想だった)、しっかりと場内を沸かせていたのは流石。
音楽性が高く、パフォーマーとしての肝も既に座っており、男性だけでなく女性の支持も得られそうなタイプの凛とした美しさをたたえている。つまり才色兼備(その意味では96年にロジャーズが紹介した新人クロウル・シスターズとは逆ですな[笑])アルバムは日本でのCD発売も考えているという事なので、そちらも楽しみだ。
【CHIC featuring NILE RODGERS】
セット・リストで御気付きの通り、近年のメニューを基に主要中の主要曲を凝縮した選曲、曲順でライヴは進行した。しかもそれを一時間強で消化するべくショート・ヴァージョンで演奏、ほぼMC無しという事から「とにかく曲数を増やそう」という想いが伝わってきた。
ライヴはいつもの呼び込みアナウンス(ロジャーズ本人によるもの!)が流れてスタート。しかしロジャーズは暗転してアナウンスが流れる前から既に舞台上に(笑)。彼は時々こういう(スタッフ泣かせの)サプライズを行う。前回同様、アナウンスに同期させる形で映写される映像が面白く、デュラニーズも盛り上がっている。バンドが揃い、いよいよ演奏開始。いつもの様に冒頭三曲を一気に演奏してアリーナ席をダンスフロアにしていく。スタンド席のあちらこちらでも、踊らずにはいられない観客が立ち上がりだしている。
ロジャーズは仕事仲間であるという以上の意味でDDが大好きだ。近年「DDは自分のセカンド・バンドの様なもの」と発言している程に。そしてDDはシックからの影響を隠さないバンドだ。特にエドワーズがジョン・テイラー(ba)に与えた影響は大きく、ギターからベイスに転向する切っ掛けになったともいえる存在。思えば、両者の具体的な交流が始まる前の、それこそデビュー曲「プラネット・アース」からして既にシック風だった。ロジャー・テイラー(dr)は「DDに加入した頃にジョンから薦められてシックを研究した」と話している。その意味で、「DD命!DDしか聴かない!」というタイプの一途なファンの心にも、「DDに含まれている成分」としてのシックのグルーヴは届いたと思う。
次の1979~80年のプロデュース作品からなる四曲メドレーも引き続き盛り上がりをみせたが、続く「ライク・ア・ヴァージン」、一曲あけての「レッツ・ダンス」時におこった段違いに大きな歓声から想像するに、デュラニーズのコア世代にとっては少し前の、少々馴染みの薄い曲だったかも知れない。時系列で整理すると、シスター・スレッジの二曲(79年)はDDがデビューする二年前、ダイアナ・ロスの二曲(80年)はデビュー前年。『リオ』の後に『レッツ・ダンス』、その後が『セヴン&ザ・ラグド・タイガー』。そして「ライク・ア・ヴァージン」「マテリアル・ガール」の頃、DDはロジャーズがリミックスした「ザ・リフレックス(シングル・リミックス)」と、ロジャーズが共同プロデューサーを務めた「ザ・ワイルド・ボーイズ」を出している。それらがチャートのトップを争っていた。全米チャートのトップ3をロジャーズ関連作が占めるという週まであったのが84-5年の音楽シーンだった。
「ライク・ア・ヴァージン」を歌うはフォラーミ。サビでの「♪ヘ~イッ!」はみんな(男女とも!)がシャウト。毎回のお楽しみとして既に定着している。そして同じくお楽しみ曲として定着してきている「レッツ・ダンス」は、デュラニーズからすればまさかのラルフ・ロール(dr)のリード・ヴォーカル。歌い回しをかなりデイヴィッド・ボウイーに近付けている事も驚きだったのではないだろうか。
ボウイーもマドンナも常に変化していくタイプのミュージシャンなので、ヒットした時期以降、どちらもオリジナル・アレンジでこれらがライヴで披露される事は滅多に無い(ボウイーに至ってはライヴ自体が永遠に開かれない・・・)。オリジナル・プロデューサー監督下での、オリジナル・アレンジを忠実に守った演奏をライヴで体験するというのは、(しかもギターリストどころかギターそのものも同じなのだ!)とても楽しい事だったと思う。
それら三十年以上前の大ヒット曲の間に演奏されたのが、ロジャーズの現役ぶりを象徴する「2013年を代表する一曲」といえるダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」(これももう四年前なのか・・・)。本曲をシックがライヴで演奏する際のイントロダクションとして定着しているMCは残された。要約すると
「僕はラッキーだ。癌を宣告されたけれど今は完治(キャンサー・フリー)している。その闘病を始める頃にダフト・パンクと曲を作る事になり、僕はその想い、幸運を手に入れた(ゲット・ラッキー)という気持ちを歌にした」といったところか。
最初はキーボードとキンバリー・デイヴィスの歌だけで静かに始まり、サビと同時にあのリズム・ギターが加わって、サビ終わりからバンド・ヴァージョンに突入するというドラマティックなシック版「ゲット・ラッキー」へという展開への観客の反応は素晴らしいものがあった。ダフト・パンク印のヴォコーダー・パートはラッセル・グレアム(右手key)がしっかり再現。ブレイク・パートでは観客の大合唱も聞かれ、この曲の知名度の高さに改めて気付かされもした。
完全固定ではない、掛け持ち仕事が多いメンバーからなるバンドなので、どうしても毎回来日メンバーは代わりがちだ。特にホーン・セクション。今回はスティーヴ・ジャンコウスキー(tp)とブランドン・ライト(sax)という組み合わせ。数年前から参加しているライトはシックとしては初来日となる。過去にはジャズ・フェスティヴァルでの来日経験があるそうだ。彼が若い(三十五歳)せいか、二人が揃って行ういささかコミカルなアクションにキレがあった(笑)。それぞれのソロは、ジャンコウスキーは「愛してほしい」で、ライトは「アイム・カミング・アウト」で披露された。
終盤は定番、二曲の全米ナンバー1ヒッツ、「おしゃれフリーク」「グッド・タイムズ」で盛り上がりまくって大団円。「禁じられた恋(My Forbidden Lover)」や「想うのは貴男の事ばかり(Thinking of You、シスター・スレッジ)」、新曲「アイル・ビー・ゼア」(果たして新アルバムは?!)はカットされたのだから、流石にこの二曲ぐらいはフル・コーラスで演奏しないとフリーク諸氏が怒るよなぁ(笑)。
今年の夏はアース・ウィンド&ファイアーと共に北米を回っていたシック。その終盤、八月十三日のトロント公演ではロジャーズが急病で倒れ、急遽EWFのギターリストが代役を務めるという日もあった。それから一ヶ月強での来日だったので、先ずは復調を、そして無事の来日に胸を撫でおろした。それでなくても今回の来日は南米から地球の反対側の日本へという、スケジュール管理担当者を叱りつけたくなる程の強行スケジュールだったので、心配をしていなかったといえば嘘になる。それでもロジャーズだけでなくバンドは皆、疲れもみせず、ツアー続きのバンドが陥りがちなダレた演奏もせず、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。心からの感謝の気持ちを贈りたい。実際に、シック目当ての観客は少数派であったにも関わらず、場内からの拍手・歓声はとても大きかった。続くトリ=DD登場へのウォーミング・アップ担当としての役割を見事に果たしていたといえる。
そうそう、拍手の話、歓声の話を書かせて下さい。
この二十年近くで感じている傾向ですが、若いミュージシャンのライヴに行くと拍手が小さくて嫌なんですよ。アンコール時なんて「どうせ出てくるんでしょ」みたいな。更に近年は拍手するべきタイミングで写真どころか動画の撮影、開演中でも構わず投稿。
騒げば良いというものでもないけれど、感謝が見えない。敬意が感じられない。「ミュージシャンや舞台をバックに写真撮影」って、それは観光なの?と。
この日、武道館に集った観客の拍手と歓声はとても大きくて、それがとても嬉しかったんです。
良いコンサートは会場全体で作り上げるもの。良い演奏を心掛けるミュージシャン。彼等を盛りあげて良い気持ちにさせるのが観客。その気持ちに応えて更に良い演奏で返すのがミュージシャン。その遣り取りで場は盛り上がるのです。ケース・バイ・ケース、その場その時のミュージシャンの好みも踏まえて、良いコンサートにする為に最善の努力を尽くすという事を観客もするべきだと思うのです。
その意味で、この夜の観客は素晴らしかったなぁと感じたのでした。三組全体を通じて感じた印象です。
【Duran Duran】
DDの武道館公演は、今世紀に入って実現した、デビュー時の五人が再び揃っての初のライヴとなった2003年の来日ツアー時以来となる(ツアー初日は大阪、武道館は最終公演地)。その数年後にアンディ・テイラー(g)が抜け、ローズ、ジョン・テイラー、ル・ボン、ロジャー・テイラーの四人になってからは二度目の来日だ。九年振りとなる。
新作の名を冠したツアーに相応しく、グレイテスト・ヒッツと新作『ペイパー・ゴッズ』収録曲をバランス良く配したセット・リストだったと言える。新曲が混ざっても楽曲クォリティ及び客席のテンションに差異を感じなかったのは、現在の彼等が好調である証だろう。そして痛感したのは「どんな曲調でもサイモン・ル・ボンが歌えばDDになる」という事(音楽監督はローズであるという事を前提として)。かなりの音楽性の幅を持つ彼等の音楽に統一感をもたらしているのはル・ボンの歌声とクセのあるメロディーであり、その「観客が歌いたくなる個性的なメロディー」の持つ魅力が、DDの独特さのかなりの部分を占めているのだなと改めて痛感した。
あ、それとギャグ寸前ともいえる独特のアクションも(笑)。あれは彼でないと成立しない格好良さ。
更にル・ボン称賛を続ける。
「不測の事態のどう対応するか」はその人物の真価を確認出来る一つのバロメーターだと思う。この日のライヴで、機材トラブルで「ラスト・ナイト・イン・ザ・シティ」を再び最初から演奏し直すというアクシデントがあった。そういう編曲であるかの様に見事に「しーん」となったのだが、ル・ボンはうろたえる事無く、極めて冷静に「マシーン・トラブルなのでやり直す」と事も無げにアナウンス、一瞬凍った場内は見事に湧いた。あっぱれだった。彼のフロント・マンとしての落ち着いた振る舞い、役割を引き受けるという自覚と覚悟に感動した。・・・まぁ、もしかしたら過去何度か同じ箇所で止まっちゃっていたから慣れていただけなのかも知れないけれど(笑)。いずれにせよ男を上げたのは確かだ。
全体を通して印象的だったのは舞台上の明るい雰囲気。四人になってから十年以上。結束の高さ、仲の良さが伝わってくるライヴだと感じた。精神的には兄弟なのだろう。デュラニーズにとってもそれが一番嬉しかった筈だ。
さて、我等がナイル・ロジャーズは中盤に登場した。前日が六十五歳の誕生日だったので、先ずは誕生日祝い。余談だが、スタッフがステージに運んで来たケーキは、有難い事に夕方控え室に我々が差し入れたものだった(この場を借りて感謝)。ル・ボンが音頭を取り、観客がバースデイ・ソングをロジャーズに贈った。
共演は二曲。当然いずれもスタジオ・ヴァージョンでロジャーズがギターを弾いている曲だ。
先ず1986年発表のアルバム『ノトーリアス』からタイトル曲。前年の、DDがザ・パワー・ステイション(アンディ・テイラー、ジョン・テイラー)とアーケイディア(ニック・ローズ、サイモン・ル・ボン、ロジャー・テイラー)のふた手に分かれて行った活動を経ての再出発は、ロジャーが脱退、アンディも数曲に参加しただけで脱退という結果に至る、全員が揃わない形でのものとなった。その苦しい時期を、残った三人はロジャーズを共同プロデューサーとして迎えて乗り切った。その身を削った成果ともいえるアルバムからの大ヒット曲を、三十年の時を経て両者が共に奏でるのは感慨深い体験だったと思う。2006年のアンディ再脱退後、サポート・ギターリストをずっと務めているドミニク・ブラウンとロジャーズが向き合ってリズム・ギターを弾く図は、まるで職人の師匠が弟子に「技は見て盗め」と伝承しているかの様だった。
もう一曲は新作『ペイパー・ゴッズ』からの先行シングル「プレッシャー・オフ」。ロジャーズは共同プロデューサー、共作者として関わっている。両者の親交が同窓会ではなく現在進行形である事がわかる。ロジャーズが弾くだけでバンドの音が変わる。まぁそうでないとゲスト参加の意味が無いのだけれど。
考えてみれば二曲とも、元々、録音だけでなくPV撮影にもロジャーズは参加しているものだ。極めて順当な二曲だった。
以下はライヴ・リポートというよりも補足情報として、その他の演奏曲でシック/ロジャーズ関連のものを御紹介する。
「ザ・ワイルド・ボーイズ」はロジャーズとバンドの共同プロデュース曲。
「007 美しき獲物たち」はエドワーズとバンド、ジョン・バリー(007音楽といえばこの人)が共同プロデューサーとなっている。意外にも全米チャートで第一位に輝いた007主題歌はこれだけだ。ライヴでは舞台後ろのスクリーンに、その時のボンド役で今年亡くなったロジャー・モー(ロジャー・ムーア)の姿が映し出されていた(ツアー中に新たな意味が生まれてしまった・・・)。
「オンリー・イン・ドリームズ」はロジャーズが共同プロデューサー、共作者、ギターリスト。
「(リーチ・アップ・フォー・ザ・)サンライズ」のヴォーカル・パートのプロデューサーはロジャーズ。ロジャーズ制作で一度仕上げられたが、ヴォーカル以外のパートをバンドが後で録り直したという経緯からこういう表記となったと推測。収録アルバム『アストロノート』発売前の、上記2003年の来日公演で既に新曲として披露されていた。
こぼれ話①:96年から二十一年 a
本文で触れた1996年の「JT Super Producers 96 Nile Rodgers」。この時から現在まで変わらないシックのメンバーがもう一人居る。今回はスケジュールの都合で不参加だった、ファースト・コール・メンバーであるビル・ホロマン(sax)だ。
こぼれ話②:96年から二十一年 b
その「JT...」のライヴでル・ボンがシックをバックにして歌ったのは、同ライヴのテーマ・ソングとして当時ナイル・ロジャーズ名義の新曲として発表された「ドゥ・ザット・ダンス」(ル・ボンは共作者でもありスタジオ録音にも参加)、そして「ノトーリアス」「レッツ・ダンス」「ザ・ワイルド・ボーイズ」。
こぼれ話③:ニュー・ジャージー・R&Rコネクション a
今回のホーン・セクション二名=ジャンコウスキーとライト、そしてファースト・コール・トランぺッターのカート・ラム、他のホーン要員であるバリー・ダニエリアン(tp)は、皆ニュー・ジャージー州のロックンローラー達(ブルース・スプリングスティーン近辺)と繋がりがある。ダニエリアン、ラムはスプリングスティーンとの、ライトはジ・E・ストリート・バンドのドラマー=マックス・ワインバーグとの共演歴がある。
そしてジャンコウスキーとライトはサウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークスのホーン経験がある。実は今回の来日と同じ日程(向こうは十九日と二十日)でサウスサイド・ジョニー達のライヴも都内で行われていた。二人は武道館での出番を終えてから彼等のもとへ向かい、異国の地でのまさかの再会を果たしている。
こぼれ話④:ニュー・ジャージー・R&Rコネクション b
そのサウスサイド・ジョニー&ザ・ジュークス(この時だけ短いバンド名だった)の83年作『トラッシュ・イット・アップ!』のプロデューサーは何とロジャーズ。彼等としては異色作だが、ロジャーズのディスコグラフィとしては、ソロ『グッド・グルーヴ・アイランド(Adventures in the Land of the Good Groove)』やシックの『ビリーヴァー』、ボウイーの『レッツ・ダンス』と同時期の好作であり、大きな解釈をするならば84年のスプリングスティーン『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』のプロトタイプ的な位置付けも今となっては可能だと思う。
こぼれ話⑤:ニュー・ジャージー・R&Rコネクション c
因みにシックのゼロ年代の華=ジェシカ(ジェシー)・ワグナー(リード・シンガーのひとり。現在のフォラーミのパートを担当していた)も、近年はリトル・スティーヴン&ザ・ディサイプルズ・オヴ・ソウルのコーラス要員としても活躍。彼女は昨年のDDのツアーにも一部参加していた(嗚呼、今回も彼女だったら再会出来たのに!)。
こぼれ話⑥:今回シック初体験だったデュラニーズの皆さんへ:
シックは2010年から、シックの曲、シックがバックに回った曲だけでなく、ナイル・ロジャーズがプロデューサーとして関わったヒット曲(ロジャーズ作曲ではないもの)もレパートリーに加えています。今回の「レッツ・ダンス」「ライク・ア・ヴァージン」の他に、インエクセスの「オリジナル・シン」そしてDD「ノトーリアス」も! ヴォーカルを歌姫二人=キンバリー・デイヴィスとフォラーミが担当した、ひと味違う「シック版『ノトーリアス』になっていますので、次のシック来日時はそれを聴きに是非いらして下さい。